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裏話その一
なんとか刊行にこぎつけた「猫耳戦車隊」。私もとりあえずホッとしています。で、今回からその裏話を披露していくミニシリーズです。
「猫耳戦車隊」裏話その一。
エンターブレイン(当時はまだアスキーだった)のS氏から原稿依頼があったのは、ちょうど二年前の夏。文庫はゲームのノベライゼーション、新書は架空戦記が主体だが、これからはオリジナルや別ジャンルにも力を入れていきたいというお話。
最初に私が出した案は、超能力を持った美少女が悪辣な暴走族の連中をぶち殺していくといったホラー・アクションもの。ところが、まもなく似たような話が直木賞作家の手によって書かれ、ベストセラーになり、今年には映画にまでなってしまったんですねぇ。そう「クロスファイア」です(くーっ)。
もちろん、その本を書店で見たとたん、「こりゃ、あかん」と思い、次の打ち合わせのときS氏に「代わりに『猫耳戦車隊』というのはどうでしょう?」と持ちかけたのでした。我ながら極端な話ではありますな。
それから遅筆な私は「エンジェル・リンクス」と「帝国大海戦」を終わらせ、ビョーキで入院・手術し、「零式スター・パニック」と「第二次宇宙戦争」(ともに9月には出るらしい)を書き、ようやく「猫耳戦車隊」を完成させたのだった。長い2年間でしたなぁ……。(その二につづく)
2000.7.26 ◇to page top
裏話その二
「猫耳戦車隊」裏話その二。
じつは「猫耳戦車隊」の世界には、「ウサ耳爆撃隊」「牛乳(ウシチチ)艦隊」なるものが存在します。続編でちらりと登場するかも?
マクロな視点の架空戦記で一番描きやすいのは艦隊物。反対にミクロな視点でキャラクターを描けるのは、飛行機と戦車。地べたを這いまわっている分、戦車のほうがより生活感を含めて描ける気がします。「猫耳」の舞台を戦車隊にしたのはそういった理由から。
戦車の資料を探しにいろいろと見てまわりましたが、書店で目につく戦車本の95パーセントはドイツ物ばかり。まぁ、魅力的なのはわかりますが、ちょっと偏りすぎではないでしょうか。
ちなみに私の知り合いは、どうしたわけかイギリス戦車好きばかりです。
で、いろいろと検討した結果、「猫耳」たちが乗るウィスカーは、イメージ的にドイツでもイギリスでもない、ソ連のT34がベースとなったのでした。
技術的には第二次大戦時代を基本としていますが、いろいろとトッピングあり。
キャラを増やしたくなかったので、自動装填装置がついた。
飛行機にでかい顔をさせないように対空レーザーをつけた。
主砲の威力が欲しかったので105ミリ砲搭載となった。などなど。
二巻では登場する戦車のバリエーション(個人的に好きなドイツの駆逐戦車ヘッツァーもどきとか)が増えますので御期待下さい。(その三につづく)
2000.7.28 ◇to page top
裏話その三
「猫耳戦車隊」裏話その三。
書店のレジに、両手いっぱいの本を持っていく。半分は「重戦車大隊記録集」「パンツァー・フォー」といった戦車関係。残り半分は「世界のネコ図鑑」「猫のたましい」「日本のネコ」(写真集)といったネコ関係。レジのおねーさん、「何じゃ、こいつは?」という顔をしてましたなぁ。
出てくるキャラのほとんどが猫耳キャラのため、バリエーションをつけようと、本物の猫の本をいろいろと参考にしたわけです。リンクス・ティップ、ドンキー・イヤー、オッド・アイズなと。ネコの種類や体の部位名などは、さらに戦車名などにも転用されました。
岡本賢一さん、山本貴嗣さん、加藤&後藤さん、山岸真さんなど、知り合いの小説家、漫画家、翻訳家には猫好きで、実際に飼っている人たちが多い。私も子供のころには家で飼っていました。
……でも、本物の猫好きと猫耳(一般的にはカタカナ表記されること多し)ファンはあまり一致しないんだよね。イギリス戦車ファンはいても、猫と猫耳少女どっちも好きという知り合いはいないもんなぁ。
続編「猫耳戦車隊、西へ」は、12月発売予定です。間が開いてしまって申し訳ない。他にも書かねばならないものがいろいろとありまして……。3巻(出るのか?)はなるべく早くするつもりですので。
そろそろ時間の余裕がなくなってきたので、このコーナーはしばらく休みます。ではでは。
2000.8.1 ◇to page top
裏話その四
「猫耳戦車隊」裏話その四。
もうひとつネタがあったので第四弾を。「その一」では原稿依頼を受けたところを紹介しましたが、そのとき「アスキーといえば、『ハイパーあんな』ですな。あの漫画、大好きなんですよ」といったところ、なんと後日、作者の近藤るるるさんのサイン色紙が送られてきたのです! ありがたや、ありがたや。近藤るるるさんと担当のSさんにはひたすら感謝です。
ご存知の方も多いでしょうが、『ハイパーあんな』は一見ロリロリのあんなが実は格闘技の使い手というコメディです(「新」になるとシリアス度が上昇)。しかし、何といっても見せ場は、親友みっちゃんのあんなに対する倒錯した愛がいつ炸裂(!)するか、だったといえるでしょう。
あのサイン色紙をいただいたとき、すでに「猫耳戦車隊」が百合物となるように定められていたのかも(笑)。
正直な話、執筆する直前まで主人公の栞里は男の子だったのです。それがたまたまテレビで漫画家の竹宮恵子さんが同性愛について話しているのを聞いて、やっぱり女の子にしようと思ったしだい。最後の一日で重大な決定がなされたと「あとがき」で書いたのはこのことです。
さて、F6Fさんからご提案いただいたカツオブシというのは、作品にぴったりなので、登場させてみたいと思います。感謝。
蒲生さん、海軍省の食堂はさすがに私も行ったことはありません(笑)。たしか吉田俊雄氏の何かの本で紹介されていたと思います。天ぷら蕎麦がいくら、とか。思えば海軍関係については、吉田氏の本に一番お世話になっていますね。情報だけではなく、文章のリズムもいいし。明治42年生まれというから91歳。凄くエネルギッシュな方です。
では、今度こそ、しばらくこのコーナーは休みます。
新刊・近刊コーナーの方のチェックをよろしくです。
2000.8.7 ◇to page top
裏話その五
「猫耳戦車隊」裏話その五。
そろそろファミ通文庫は8月の新刊が登場し、「猫耳戦車隊」は平積み台から撤収するころです。
担当のSさんからアンケート葉書の集計結果を聞いたところ、異常な事態が判明。なんと30代、40代の読者が多い! ファミ通文庫読者の年齢の倍近い! きっと架空戦記から引き続いて読んでいる方で「おや、伊吹がこんなの書いてるぞ」という感じで手にとってくれたのでしょう。それにしても「猫耳」にまで手を出す柔軟な感性は素晴らしいの一言です。
8月になってからはようやく10代、20代の読者の葉書も届きだしたそうですが、ちょっと遅かったかも、とのこと。
原稿を書く前には「あまり対象年齢は考えなくて良い」といわれていたのですが、2巻目は多少(?)意識しようと思っております。
それにしても、集英社のスーパーダッシュ文庫、徳間書店のデュアル文庫、そして秋に登場する某社の新レーベルと、この分野への新規参入は凄まじいものがありますね。ひと月に40冊(少女物を入れると70冊)は出ているんじゃなかろうか。高校生がひと月に本に使う金額を考えると、まさに超激戦区といえますね。
ボルヘスいわく「16歳までに本を読まない人間は、一生本を読まない」。若い人向けの本がいっぱい出ることは良いことだと思います。
2000.8.16 ◇to page top
裏話 最終回
とりあえず第一巻の総括。
その昔、「猫耳戦車隊」は実験作のつもり、と書いたことがありました。小難しいものを書いた、という意味ではありません。ウケるかどうか、分からなかったからです。
たとえば硬派なAFV(装甲戦闘車両)ファンからすれば「猫耳? けっ」ということになるでしょうし、ネコミミの「で○こ」を愛好する人にはカタすぎるといえましょう。
両者の公約数が果たしてどの程度あるのか? 出してみるまでは分からない、というのが本音でした。だから実験作。
「世の中にはこんなヨイ本もあったのですね」というgreifさんや「ツボを押された」という野尻抱介さん(明日の日本SFを担うお方のひとりでしょう。お世辞ではなくて)の感想はほんとうに励みになります。
他の方々からいただいた感想、助言、苦言も参考にさせていただいて、続編「――西へ」を執筆したいと思います。(リコさん、アレはちゃんと登場させるつもりですので、お楽しみに。へへへ……)
追伸。各話タイトルはご存知のとおり、映画のタイトルからとっております。
第4話の「誓いの休暇」と「五人の札つき娘」はマイナーなので何もひねっていなく、ただ並べているだけ。前者は少年兵が主人公の泣けるソ連映画で、後者はナチに協力した五人の娼婦たちが汚名返上のために一肌脱ぐという娯楽物。
今後に使う題のリクエストがあれば受け付けます。「トラトラトラ」→「ネコネコネコ」とか考えて、ダメだなぁ、ともう行き詰まっていたりなんかして。
2000.8.16(16日付けゲストブックより転載) ◇to page top
裏話 追加
何となく思い出したこと。
アヴァロン基地とかルービン基地とか、「猫耳戦車隊」の地名や基地名は、とあるところから持ってきています。まぁ、気づく人はほとんどいないでしょうし、気づいてどうなるというものではないので非公開のままでいましょう。
例外だったのは、一目瞭然の「天下茶屋市」。
最初は「鋼鉄都市」と仮名をつけて書いていたのですが、やはり面白くない。そこで関西在住の友人と電話で話しているときに出てきたのが、コレ。実際に大阪にある地名だそうですが、軌道塔――天の下にある茶屋というイメージが面白いので採用しました。
他に考えていたのは「玉兎銀蟾」(ぎょくとぎんせん)。中国の伝説で、月にいるといわれるウサギ(玉兎)とヒキガエル(銀蟾)。転じて月の異称となります。こちらも気にいっているので、別の作品で使うことになるかも。やはり月面バニーガール物か?
先の友人はまた「天美我堂」(あまみがどう)という名も推薦してくれました。
そういえば「零式」には「関空」基地が出てくるし、何故か関西づいていますな……。
2000.9.21 ◇to page top
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