I氏の手紙

Ibuki Hideaki Free Talk

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私的・高額本リスト

 先月、村田蓮爾の「futurhythm」(9500円)を買いました。昨年は「山田章博画集」(8000円)を、一昨年は「山尾悠子作品集成」(8800円)を買っている。
 買うときに「えいやっ!」と気合いの入る高額本のことはけっこう覚えているようですね。そこで今回は、記憶の底を探って、所有する高い本リストを作ってみます。

「ハンス・ベルメール写真集」リブロポート(5500円)
 清水の舞台から飛び降りるつもりで買った最初の本。1985年か86年くらいに、美大に行っていた友人が見せてくれ、衝撃を受けて欲しくなったもの。
 当時の買い物のメインは文庫本。1000円以上の本は滅多に買わないという時代でしたので、この写真集を買うときには、まさに覚悟が必要でした。のちに何十倍の値がするベルメールのオリジナル・プリントを買うときが来ようとは夢にも思っていなかった(リブロポート自体が無くなることも)。
 アート系の写真集、とくに輸入物は高いです。90年代になってから買ったホルスト・P・ホルスト、アーヴィング・ペン、ジル・ベルケ、ジョエル・ピーター・ウィトキン等の分厚いハードカバー写真集はみんな1〜2万円くらいでした。

「宇宙医学」大島正光・松田源彦監訳 同文書院(20000円)
 これも友人が持っているのを見て、1987年くらいに買ったもの。「宇宙ステーションにおける医療施設が満たすべき条件」なんて項目がある。初めて見たときは「うわっ、こんな本がホントにあるんだ! まるでSFだ!」と思ったものです(笑)。
 買ってから約15年。資料としてはろくに生かせないうちに、もうデータ的にはずいぶん古くなっていると思います。
 学術書、専門書というやつもやはり高い。医学関係の知人に聞くと、2万円はまだ安いほうだとか……。

「日本陸海軍総合事典」秦郁彦編 東京大学出版会(32000円)
 軍事関係の本は資料として割り切って買っているのだけど、3万円を超えるものはさすがにちょっと躊躇しましたね。でも、この本ならでは、という部分も多く、やはり思いきって1994年に購入。創作の資料として充分使えましたので「元は取れた」と思います。
 でもって、その仕事で得た金で、趣味のものをまた買ってしまうんですね。例えば、次のコレ。

「ALICE`S ADVENTURES IN WONDER」(50000円)
 御存知、ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」の洋書。「アリス」は日本でもいろいろな形で出版されているのだけど、私が持っているのは1969年に英国で出た2500部限定の豪華本。エディション・ナンバーは1917番。A3判ほどもある大きな本で、最大の特徴は、あのサルバドール・ダリが挿し絵を描いていること。じつはこの本、口絵部分にダリのリトグラフがついているはずなのにそこが欠落していまして、もし、それが残っていたのなら十倍の値になっていたと、洋書屋の店主にいわれたのでした。
 今回これがもっとも高い本だと思っていたのですが、あっ、もっと上があった。

「福井静夫軍艦写真集」KKベストセラーズ(65000円)
 そのものズバリの本。もっとも、これはセット価格でして、厳密には1冊の本ではありません。
 これはこれで貴重な本ですが、日本海軍では終戦直後に大量の図面と写真を焼却処分するという「暴挙」を行っており、それが残念でなりません。同じ敗戦国のドイツでは、きちんと残されたというのに……。残された日本のわずかな資料も結局は(以下、自粛)

 5000円以上の本は、探せばまだ出てきそう。三一書房から出た「香山滋全集」は1冊7800円くらいだったと思うし(どこかに埋もれているので未確認)、事典や図鑑類で1万円前後の本も何冊かある。「第二次宇宙戦争」を書くときに資料にしたシベリア先住民族の本も確か7000円くらいだった。
 文庫と新書が買い物のメインとはいえ、長いこと本を買っていれば、それなりに高額の本も貯まるものです。
 でも、世の中には古今東西の稀覯本を求め、ケタ違いの札束が乱れ飛ぶ世界もあるとか。さすがに、そちらのほうには食指は動きませんね。そんなに使える札束自体がありませんし……(^_^;)。

2003.5.26 ◇to page top


最近買った本とDVDソフト 2003年4月編

(価格は税抜き)

1「ニッポンは面白いか」選書メチエ編集部編 講談社選書メチエ 1600円
2「武士の家計簿」磯田道史 新潮新書 680円
3「バカの壁」養老孟司 新潮新書 680円
「話せばわかる、なんて大ウソ」。うん、まったくそのとおりだ(笑)。ここ数年「利口/バカ」ネタの本がいくつか評判になっていますが、解剖学者でユニークな視点の持ち主が書いた本書は一味違うようです。
4「色彩の世界地図」21世紀研究会編 文春新書 720円
5「外国映画ぼくの500本」双葉十三郎 文春新書 950円
6「社会調査のウソ」谷岡一郎 文春新書 690円
7「ケンブリッジの哲学する猫」フィリップ・J・デイヴィス 深町眞理子訳 ハヤカワ文庫 680円

8「日本庭園の秘密」エラリィ・クイーン 大庭忠男訳 ハヤカワ文庫 780円
9「密室殺人傑作選」H・S・サンテッスン編 山本俊子他訳 ハヤカワ文庫 940円
10「SFマガジン」6月号 早川書房 848円
「拡がりゆく小説 スプロール・フィクション」特集。この単語は知らなくて当然。特集のための造語だそうです。要はSFと他の境界作品の現在ということ。
 掲載作のケリー・リンク「私の友人はたいてい三分の二が水でできている」は、本サイトの長いSFタイトルリストにランクインさせましたが、このくらいの字数ではずっと下位のほうです。

11「futurhythm」村田蓮爾 ワニマガジン社 9500円
 村田蓮爾の第二画集(フューチャリズム)。バインダー方式で、絵の順番が組み替えられる。この人に限らず、アート系の人はいろいろと凝ったことをやりたがるもの。普通の造本ならば、価格は半分で済んだのではなかろうか。もっとも、こんな本人の希望が通るのは人気があるおかげ。私もやはり欲しくて買ってしまったわけだし。
 そういえば去年も、8000円の山田章博画集を購入していましたね(奇しくも、去年は「ラーゼフォン」、今年は「LAST EXILE」とそれぞれアニメのキャラクター原案をやった人たちですな)。
 これまでいろいろと本は多く買ってはいますが、やはり高い本というのはそれなりに記憶に残っているというもの。次回あたりにそのことを書きます。

 いただいた本
12「蝕・太平洋戦争」林譲治 コスモノベルス
13「帝国の聖戦」4巻 吉田親司 学研歴史群像新書

DVD
14「ストラトス・フォー」2巻(2〜4話)  バンダイビジュアル 6000円
15「キディグレイド」3巻(5〜6話) 角川書店・IMAGICA 5800円
16「月のひつじ」 パイオニア 4700円
 アポロ11号の月着陸の裏には、もうひとつのドラマがあったという映画。

2003.5.14 ◇to page top


最近の仕事状況

 先日、エンターブレインの新しい担当となったN嬢から、「猫耳戦車隊」のガレージキット「E型ウィスカー改造キット」と「ロング・ウィスカー改造キット」を受け取りました。制作してくれたシラス道さんには感謝。ありがたいことです。でも、これまで連絡をくれなかったエンターブレインの版権部って、いったい……?(前の担当のS氏が体を壊して以来、しばらくブランクが生じたせいもあるのでしょうが)
 さて、そのエンターブレインのファミ通文庫でも新しい企画に着手しましたが、やるべきことが貯まっていますので、それが形になるのはずっと先になりそう。
 と、そんなわけで、今回は仕事状況をお知らせします。これもブランクを作るのはまずいですし……(^_^;)。
 えーと、去年からずぅ〜〜〜っと長いこと取り組んでいる仮称第一〇七号作品。手こずっております。自分にとっての新ジャンルであること。一から調べなくてはならないものが大変多いこと。おまけにとっても長いこと(一冊物としては自己最長)。といった理由で、調査と執筆に長い時間を取られてしまいました。
 しかも、ようやくあと一息、いや二息くらいで終わるかな、というところで急遽べつの作品を書くことになりまして、作業を中断してしまいました(いろいろと事情があるのです、こちらにも……)。
 で、その新しい第一〇八号作品の方は久しぶりの(広義の)架空戦記となります。新しいアイディアが浮かびましたので、書く気になった次第。去年発表した「溟海の鋼鉄葬」とも「異説ミッドウェー」とも違う、これまでにないタイプのものになりますので、乞うご期待です。
 仮タイトルだけを明かすと――「天空魔弾」
 ほーら、変わっているでしょ。夏には刊行したいものです。
 それが終われば第一〇七号の仕上げに戻りますが、他にも進行すべき企画が複数あり、いつの間にか大変な状況になっています。自業自得ではありますが……(-_-;)。
 それぞれの作品は、発売時期が近づいた時点で随時お知らせしていきますので、チェックのほどをよろしくお願いいたします。
(4月27日記す)

2003.5.1 ◇to page top


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